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「弊社は休みですが?」インドの祝日にドバイで遭遇

中東ビジネス

4月15日(月)午前

 

完全に予定が狂った。

 

その日は、4月15日、月曜日。

午前はジェベル・アリにある自社の物流倉庫で、スタッフと搬送の打ち合わせ。

午後はドバイを横断して隣の首長国シャルジャに向かい、

シャルジャの取引先工場で製造の進捗を目視確認するつもりだった。

シャルジャの工場は基本的に「いつ来てもOK」というスタンスだ、ランチを済ませて行こう。

 

午前11時頃、ジェベル・アリの倉庫で

インド人社員がフォークリフトを操縦するのを眺めながら

「あぁ、この倉庫に気軽に来れるのも今月までだなぁ。

夏に来たら化粧が溶けてしまいそうだなぁ…」

なんてことを思っていたら携帯が鳴った。

 

午後に訪問予定の、シャルジャの工場長だ。

 

工場長「おい、お前さん、まだ来ねぇのかい?」

私「午後に行くつもりですよ?」

工場長「今日は半ドンだぜ姉ちゃん」

 

真顔でジョークを言うインド人おっさん工場長のことだ、

「早く来い」という趣旨の冗談を言っているのだと思った。

 

私「やだー待っててよ」

工場長「午後に来ても誰もいないぜ?」

私「ほへ?」

工場長「工場、閉まるし。俺も帰る」

私「なんで?なんで??」

 

冷静になってカレンダーを思い返す。

いや、どう考えても今日はド平日、月曜日だ。

 

混乱する私。

 

工場長「・・・ちょっと待て。

お前の周りにもインド人いるだろう。

そいつらは何してるんだ?

今日はニューイヤーだろうが!

 

なんですと?

 

インドはケララ的ニューイヤー

 

iPhone片手に首を傾げている私に気づいたインド人社員が、声をかけてきた。

 

インド人社員「マダム、どうしました?」

私「あのさ…ニューイヤーなの?」

インド人社員「イエス!今日ニューイヤー!

私「まーじでー!?」

インド人社員「インド系の会社は、今日は休みとか半休よ

 

そういうことか。

 

確かに取引先工場は、

インド人が仕切ってインド人が働く、

インドパワーが濃縮された企業。

 

インドのカレンダーに従って、

会社の営業日・営業時間が定められているのも頷ける。

 

取引先工場は14:00で午前の業務が終了、昼休憩となる。

今日はその14:00で退勤というわけだ。

 

それまでにシャルジャに到着して、任務を全て完了しなくてはいけない。

色々立て込んでいる時期のため、少しでも予定がずれ込んだらヤバイ。

翌日早朝に搬入してもらう制作物もある。

 

そのとき既に11:30。

ここはジェベル・アリ・フリーゾーン。

ジェベル・アリとはドバイの最西(南)端、アブダビ方面ギリギリの場所だ。

これから向かうべき工場はシャルジャ。

ドバイの東(北)にある。

ドバイ丸ごと横断したその先だ。

 

通常なら片道1時間、とばしても45分はかかかる。

 

やばい。

 

運転手を呼んだ。

私「シャルジャ行こ!今すぐ!車出して!!」

 

取引先工場が半休だったので、納品ムリでした。だってインドの新年だなんて私は知らなかったしぃ

…なんて言えない私は、そう、日本人。

(逆に言えば、こんな言い訳をする奴だらけなのが新興国の現場というものである)

 

インド人ドライバーの話

 

内陸の611号線をひたすらシャルジャに向かってまっすぐ走りながら、

インド出身の運転手に聞いたところによると。

 

彼らの出身地方であるインド、ケララ州の文化圏では、

毎年4月15日あたりが新年とのこと。

(うるう年の関係で多少ズレるらしい)

 

「僕たちの会社はインド人が少ないから、

今日も普通に営業してるし、僕もそれでいいんだけどね」

 

と言いつつも、家族にお年賀メールみたいなものを送信したようだった。

そっと私にも送ってくれた。

 

アラビア語以上に読めなかった。

 

なんとか無事にミッション・コンプリートして、

シャルジャからドバイへ戻ってきたときには既に夕方。

これから更にジェベル・アリまで戻る気力はない。

 

いや、私は車に乗っていただけだが、運転手がかわいそうだ。

今日だけで優に150km以上は走行しているし、

なんと言っても彼にとっては元旦だ。

もう解散することにした。

 

私をダウンタウンのアパートメントで降ろし、

運転手は砂漠地帯のシェアハウスへと帰っていく。

 

そのシェアハウスでは、1部屋に二段ベッドを3台詰め込んでいるという。

彼の給料は私の1/3以下だ。

 

彼は、自分よりずっと年下の極東アジアの小娘を

ダウンタウンのアパートメントに降ろしていくことに、

どんな感情を抱くのだろう。

 

それはドバイでなるべく考えてはいけないテーマだ。

気軽に考察を開始することが推奨できないテーマ、という意味だ。

 

どこにも着地をすることができず、

考えすぎて消化不良を起こすから。

 

カレンダーから感じる多文化

 

「なんか効率の悪い1日だったな〜・・・やりたいこと全部終わってないし」

と、妙に疲れ(気持ち的に)

アパートに帰って速攻シャワーを浴びてソファーに転がった。

 

今日の自分の敗因は、

インドのケララ州の休日を知らなかったこと。

 

取引先がケララ州のカレンダーに基づいて営業している、

と知らなかったこと。

 

 

・・・・

 

…いやいやいやいやいやそんな想定外すぎるわ!!

想定できんわ!!

 

日本では「御社と弊社のカレンダーって違うんですか!?」ということは、まずあり得ない。

実際に休めるかどうかは別として、

「X月X日は祝日」という認識は全国共通だ。

 

しかし当然、違う国には違う祝日がある。

世界中の人が入り混じって暮らす国では、それぞれが持ち込んだカレンダーが入り混じる

 

もしかしたら、日本以外の人は

「在ドバイ日本総領事館、なぜ12月23日営業してないの?」

とか思ってるのかもしれない。

 

「あれ?そのくせにクリスマスは営業してるってどういうこと?」

とか混乱しているかもしれない。

 

それぞれが、それぞれの文化を抱いて共存している国際都市。

隣にいる人が自分と異なる信条なのがアタリマエ。

 

それに文句をつける人はいない。

文句をつける人はドバイには不向きだ。

 

かといって、全ての他文化を把握し受容することは不可能である。

ごくごくシンプルに「あ、そちらはそうなんですね」と事実を認識できれば十分だ。

そしてそれすら案外難しかったりする。

 

多文化の入り混じったドバイだからこそ起こりえる、

想定外トラブルだったように思う。

思わぬところでドバイらしさを感じた1日だった。

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