ドバイには住所がない、ってどういうこと?
日本人にとっては意味不明かもしれないが、UAEには「住所」が存在しない。
「ある特定の1地点を指し示す」と言う概念がないのだ。
それは、もともとこの地域が砂漠であることに起因する。
砂漠においては「海から3番目の砂丘の頂上から東に徒歩5分」などと説明したところで、砂の配置は風とともに数時間で変わってしまう。
また、遊牧民の生活では「部族長のテントから西に2軒目」などと示したところで、彼らは移動し続ける人生。
地形も、住まいも、諸行無常。
特定の一地点を示す表現など必要ない、というか、そんな表現など作るだけ無駄なのだ。
何千年も動かない山を見て生きてきた日本人の感覚で、文句をつけるのは筋違いである。
そんなドバイに、急速に建造物が立ち並び、人間が定住するようになってから、わずか数十年しか経っていない。
ウワモノの整備に手一杯で、システムの整備が後回しになったのも無理はない。
「見た目」の整備が優先で、「仕組み」の整備がおろそかなのはドバイらしいとすら思う。
とにかく、○○町○○地域○丁目○番地という、土地にフィックスされた位置情報は、ない。
場所はどう表記されているのか
そうは言っても、現在21世紀。
それなりに位置を示さねば都市生活は成り立たない。
どのような表現方法があるのか紹介したい。
大まかな地域名
まずは、ざっくりとした地域名。
- Dubai Marina
- Al Barsha
- Deira
- Mirdiff
- Internet City
など。
これで「だいたいのエリア」が絞れる。
道路・通りの名前
次に、道路の名前。
- Sheikh Zayed Road(11号線)
- Sheikh Mohammad Bin Zayed Road(311号線)
- Hessa Streat
- Al Khail Road
など。
特に、車を運転する場合は、最低でも主要な道路5本くらいの位置関係を大まかに頭にぶち込んでおくといい。これで遭難は避けられるはずだ。

尚、少し落とし穴がある。
地域名と道路名が重複している場合だ。
道路の名前としてSheikh Zayed Roadと言った場合は、文字通り、ドバイを貫く最大の幹線道路のことを指す。
その一方。
地域としてSheikh Zayed Roadと言った場合は、Financial Centreメトロ駅からWorld Trade Centreまでの間の道路沿い、わずか1.5kmのエリアのことを指すのが暗黙の了解だ。
東京に例えて言うならば、「新宿通り」と言った場合に、道路そのものは何キロも続いているのに、暗黙の了解で新宿伊勢丹あたりのことだと認識されている・・・みたいな状況だ。
Sheikh Zayed Road 以外にも、Umm Suqeim、Jumeirahなども、「道路の名前」「地域の名前」の両方に存在している。
会話の相手が道路名・地域名どちらの意味で使っているかは、慣れれば文脈から自然に理解できるようになるが、不安なうちは遠慮なく質問して確認するべきだろう。
「甲州街道」にいるのか「甲州」にいるのか。
「靖国通り」にいるのか「靖国」にいるのか。
それは大きな問題だ。
有名な建物を起点に把握する
日本でも、口頭ではよくやる表現だろう。
「○○病院の裏手」「区役所から3軒目」といった表現だ。
このようなランドマークを起点とした場所の説明は、ドバイでは、オフィシャルな場面でも使われる。
名刺交換をして、住所欄を読んだら「○○モール反対側」などと書かれているのは日常茶飯事。
例)6thFloor, XXX Building, Opposite side of XXX mall, Deira, Dubai
名刺でもこんな書き方かよ!!
反対側、ってどっちから見て反対だよ!!
そんな表現も、慣れるとなんとなく把握できるのが不思議。
建物番号
特に住宅地の一戸建てが並んでいる地域で役に立つのが、この建物番号だ。
「Villa 163」みたいなもので、どの建物にもついている。
尚、アパートの場合は、建物番号よりもアパート名で言った方が通じるだろう。
上記の合わせ技で
ここまでのポイントを合わせると
「〇〇地域の、○○ストリート、〇〇公園の裏手の、何番の家」
こんな感じで把握が可能である。
「そこまで書き記せたら、それはもはや住所じゃん!」と思われるかもしれないが、どうにもこうにも、公式の表現ではないので、あくまで住所ではなく「場所が相手に伝わるようにこまごま書き記した説明文」に過ぎないのだ。。。
タクシー運転手に場所を説明する場合
有名なショッピングモールやホテルが目的地であれば、スムーズに行くだろう。
そうでない目的地へ行く場合、難儀することを覚悟したほうがいい。
タクシー運転手は、新入りの出稼ぎ労働者が担う職の1つ。
「運転手さんはプロだよね」などと言う淡い期待は持つべきではない。
「そんな場所は知らない(だから行かない)」
「XX地域にそんな名前のビルは存在しない(だから行かない)」
「俺の知らない場所に行きたいと言うな!!(だから行かない)」
こんな理不尽な怒り方をされたことも一度や二度ではない。
(アジア女子ナメられがち)
そんな時に運転手を黙らせ車を走らせるには
「I will show you. Just go ahead.」
もしくは
「I have GPS.」
これで黙る。
不毛な言い争いで消耗するのを避けるためにも、スマホはネットに繋いでおくのが懸命だ。
文明の利器には誰も逆らえない。
もちろん、Uberという手もある。

尚、場所がわからないときに「ごめんなさい、私はその場所を知らないのです。検索をするので、僕のスマホの地図に、そのホテルの名前を打ち込んでくれませんか?」などと言ってくる謙虚でホスピタリティ溢れる運転手に出会ったら、あなたは今日の運勢めちゃくちゃいいですよ。
通販など配達物を受け取る場合
通販を頼んだ場合。
家具家電など大物の配送を頼んだ場合。
ネットや電気などの業者を呼んだ場合。
相手に自宅の場所を説明しなくてはいけない。
基本的には、ここまで説明したような方法で場所を特定してもらうことが可能だろう。
しかし。
ドバイの場合、何より大切なのは「電話でいつでも連絡を取れるようにしておくこと」である。
ドバイには公式の住所表記がなく、曖昧である事は、配達のおじさんたちも100も承知。
そのため、向かっている道中に電話をかけてくるのが常識であり、マナーのようなものになっている。
「マダーム!XXビルって、Karama地区のXXビル?」
「違う!Business bay地区のXXビル!」
「おっけー!アブダビ方面から向かってるが、近くに何か目印は?」
「そっち方面から来るなら、YY ホテルを過ぎたあたり!」
「おっけー!10分で着くね!」
こんな感じの電話だ。
この電話によって、相手は場所を正確に知ることができるし、こちらは来訪が近いと認識できる。
(※ドバイの配達において、事前に時間を決めようとすると絶対にその通りにならないので、ストレスが溜まるだけ。
「来る直前に電話!」これが唯一にして絶対の配達時間把握方法である)
尚、郵便物はPO boxという私書箱に届くので、それはまた別の話。
誰かと待ち合わせる場合
双方がWhatsApp(LINEのようなメッセージアプリ)のアカウントを持っている場合は、WhatsApp上でGPS情報を共有するのが主流。
送ってほしいときは
「Could you send me your location (GPS) by WhatsApp, please?」
などとお願いすればいい。
大概はそれでスムーズに行くが、たまに電波の関係なのかGPS情報のピンがずれることがある。
「あっ、ピンがズレた」と気づいて再送信できる人ならいいが、そんな繊細な人種はこのドバイにいないので、間違えたまま送られてくることも多々。
相手が送ってきた位置情報の場所にやって来たのに、ここ明らかに砂漠しかねぇ!なのに「家のGPS送っただろ!」なんて言われた場合は相当に苛立つものだが、「電波のいいところで、もう一回GPS送ってくれません?」と言うしかない。
耐えよう。

インターネット最強
住所と言う概念が存在しえない、砂漠。
そこから一気に21世紀の大都市に変貌したドバイ。
一般的な世界の都市ならば
歴史の流れの中で経験したであろう
システムの変遷を全てすっ飛ばし
いきなり現代がやってきたドバイ。
しかも、今現在もまだまだ建設中・拡張中な都市のため、毎日道路の形が変わっており、紙の地図では全く追いつかず、役に立たない。
そんな街で最も頼りになるのは、Google Maps、GPS、WhatsApp。
インターネットの利器たちである。
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