シーア派のリーダー(イマーム)ホセインの死を悲しむ、追悼の行事アーシューラー。
その一環として、シーア派地域の各地で、ホセインが殺された事件「カルバラーの悲劇」を演劇にしたものが上演される。
「カルバラーの悲劇」の内容は、前回の投稿で復習をどうぞ。

この、ホセイン殉教劇のことをタアズィーエ(ta’zieh/تعزیه)と呼ぶ。
今回は、このタアズィーエについて紹介したい。


動画つきだよ!
スマホ画質でごめんね…
ホセイン殉教劇タアズィーエ
動画をどうぞ。
イランの首都・テヘランの北部。
タジュリーシュのバスターミナルにて上演されたタアズィーエの様子。
敵キャラと味方キャラ
そもそも言葉が分からないせいで、ちんぷんかんかもしれないが、ちょっとしたヒントがある。


登場人物のカラーで
敵キャラか味方キャラか見分けられるよ
イスラムにおいて、味方はいつも緑色で表現される。
対する敵は赤だ。
よって、この殉教劇でも、緑の登場人物は味方、赤の登場人物は敵、と覚えておくといい。
- 緑の人物:味方(シーア派)
- 赤の人物:敵(スンナ派)
余談だが、シーア派もスンナ派もそれぞれが「緑は味方の色!」だと思っているので、
シーア派の人々はシーア派を緑、スンナ派を赤で表現しているし、
スンナ派の人はスンナ派を緑で表現しているものだ。
(困ったぜ)
サウジアラビアの国旗は緑。
小池百合子さんも緑。
とはいえ、この演劇はシーア派が主人公なので、緑のキャラがシーア派(ホセインたち)、赤のキャラがスンナ派(ヤズィードたち)だと理解すればOK。
小物や衣装で登場人物をチェック
シーア派の伝承において、登場人物それぞれ、おおまかな衣装や小物、モチーフが決まっている。
それを覚えておくと、たとえ言語が分からなくても、どのキャラが誰なのか分かったりする。
例えば、水を汲みに行って矢に打たれたアボルファズルさん。
彼の場合、ユーフラテス川、水を汲むための袋、頭に2本の羽飾りがモチーフ。
動画内でも確認できるので、見てみてほしい。
ちなみに絵画ではこのように表現される。
当然のごとく緑だし、腕に矢を受けたことも描きこまれている。
(シーア派はスンナ派とは異なり、聖人を絵に描くことはOKだ。ただしムハンマドはさすがにダメ)
タアズィーエには登場しないが、ホセインの父アリーも簡単に見分けられる。
彼のモチーフは、三日月刀と、獅子だ。
これであなたもイランの街中で宗教画に出会う準備がバッチリだね(?)
殉教劇はどこで見られる?
ホセインの殉教劇タアズィーエは、様々な街で上演されている。
場所は、タキーイェというタアズィーエ用の演劇場や、街の広場っぽいところが会場になる。
これはヤズドという街のタキーイェ。
ここのタアズィーエは群を抜いてすごいらしい。
観たい。
私が動画を撮影した場所は、イランの首都であるテヘランの北部。
タジュリーシュ地区の、なんとバスターミナルのロータリーである。
バスターミナルなら確かに広い。。。
当然この行事の最中は、バスターミナルが使えないが、どうせ休日で、会社や学校は休みだから問題ない。
試しにバス(BRT)でここに向かうと、期間中は少し手前が終点になっていた。
バスがダメならメトロでタジュリーシュ駅まで行けば完璧。
体に鎖を打ち付ける男たちの痛々しい行進も、このタジュリーシュ広場を目指して歩いていた。

また、市場が哀悼の広場として設えられていたのも、このタジュリーシュだった。

交通アクセスもいいので、今後アーシュラーを見学したい人はタジュリーシュに行けば効率がいいかもしれない。
【参考書籍】
シーア派の基礎知識、歴史、変遷を体系的に知るには、この本が「1冊目」「理解の軸」として最適。
シーア派の中でも、ホセインの殉教に関することや、その系譜(十二イマーム派)については、以下の本が詳しく、かつ易しい。
一般書籍の価格帯でありながら、シーア派について深堀りしている貴重な一冊。
高額で分厚い専門書に手を出す前に、ワンステップ挟むのにオススメ。
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