シーア派の人々がイマーム・ホセインの死を悼む哀悼の行事、アーシュラー。
その様子は、参列者が自分で自分の体を痛めつけ、血を流しているらしいということで、言わば奇祭のようなイメージで語られることが多い。
白昼堂々繰り広げられる血まみれな行事の光景は、私たち異文化圏の人間にとっては、衝撃的なのは確かだ。
彼らはなぜそんな痛々しいことをするのだろうか。
今回は、その痛すぎる行列についてってみたレポートとしよう。

アーシュラーの痛すぎる行列に
ついてってみた
尚、この投稿にスプラッタな光景は出てきませんのでご安心を。
なぜ「痛いこと」をするのか

まずは動画をどうぞ!
(スマホ画質でごめんなさい)
イランの首都・テヘランの目抜き通り「ヴァリー・アスル通り」での追悼行列の様子である。
ヴァリー・アスル通りをのぼり、最後はタジュリーシュ広場に到着している。
イランはイスラム教シーア派の、12イマーム派を国教とする。
その信徒は、シーア派のイマーム・ホセインが、スンナ派のヤズィードに殺害されてしまった事件(カルバラーの悲劇)の追悼行事として、毎年アーシュラーと呼ばれる行事を開催する。
ホセインが受けた痛みや苦しみを、自らの体にも刻みつける。
彼を助けに駆けつけられなかった悔しさを、自らの体にぶつける。
アーシュラーの期間中に見られる「痛そうな」風景は全て、そういった行為である。
カルバラーの悲劇について詳しくはこちら

手で胸を叩く
まずは「胸を手で叩く」人々。
これはスィーネ・ザニーと呼ばれる。
イランの言語ペルシア語で、スィーネは胸、ザンは叩く。
スィーネ・ザニーは「胸を叩くこと」という意味だ。
動画の中でも、黒い服を着た男性たちが、掛け声に合わせて胸を叩いている風景が見られる。
尚、普段のイラン人男性はこんな黒い服装ばかりではない。
この黒シャツ・スタイルはホセイン哀悼のための「喪服モード」なのだ。
行列の先頭部分
(タジュリーシュ広場の入口にて)
鎖で体を叩く
アーシュラーの痛々しいイメージを作っているのは間違いなくコレだ。
右手と左手それぞれに、鎖の束を持ち、振り上げ、リズムよく自らの背中に振り下ろす。
右、左、右…と打ち付ける。
集団の秩序の中で、システマティックに行われているうちはいいが、我を忘れるほどの最高潮に達すると、痛みも流血もなんのその、という光景にヒートアップしていくことも珍しくない。
アーシュラー期間中、街頭ではこの行列のための鎖が販売されていた。
尚、この行列にテヘラン在住の日本人男性が参加した体験ブログがある。
一行目から既に面白いので一読をすすめたい。



アーシュラーの行事は「痛い系」だけじゃない
実はアーシュラーには色々な行事があり、「自分で自分の体を痛めつける行列」はその中の1つでしかない。
他の催し物の様子は、以下の投稿に目を通していただけたらと思う。
【参考書籍】
シーア派の基礎知識、歴史、変遷を体系的に知るには、この本が「1冊目」「理解の軸」として最適。
シーア派の中でも、ホセインの殉教に関することや、その系譜(十二イマーム派)については、以下の本が詳しく、かつ易しい。
一般書籍の価格帯でありながら、シーア派について深堀りしている貴重な一冊。
高額で分厚い専門書に手を出す前に、ワンステップ挟むのにオススメ。
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