ドバイメトロの駅名が変わった
久しぶりにメトロに乗った。
コロナの不安が拡がったり、ロックダウンがあったりで、ここ数ヶ月は公共交通機関の利用を避けていたのだが、現在はかえって利用者が減少し空いているーーという話を耳にし、久しぶりにメトロに乗ってみた。
すると。
何かが違う。
よくよく注意してみると、いくつかの駅名が変わっていることに気がついた。
今回(2020年5月)変わったのは、以下の3駅だ。
- Sharaf DG (シャラフ・ディージー)-> Mashreq(マシュレク)
- Nakheel Harbour & Tower (ナヒール・ハーバー・アンド・タワー)-> Jabal Ali(ジェベルアリ)
- Palm Deira(パーム・デイラ) -> Gold Souq(ゴールドスーク)
Palm Deira駅をGold Souq駅に変えたのはナイスだと思う!
ドバイの大事な観光スポットであるゴールドスーク。そこへアクセスできる駅の名前は分かりやすくしておくべきだ。うんうん。これでもう観光客に聞かれなくて済む。
(本当はAl Ras駅の方が近いんだけど、Palm Deira駅からも歩けるから許容範囲じゃない?)
↓駅の路線図。変更したばかりなので、新しい駅名は上からシールを貼ることで対応している。
さて、ドバイメトロにおいて「駅名が変わる」とはどういうことか。
今日はその点について綴っていこう。
なぜドバイメトロの駅名は変わる?
ドバイメトロの駅名が変わるきっかけは、主に2つある。
(1)駅の命名権が、RTA(※)から企業へ売られたとき。
(2)命名権を獲得した企業が、吸収・合併などで社名変更をしたとき。
である。
たとえば今回変更になったSharaf DGは家電屋さん、新たに命名権を獲得したMashreqは銀行だ。
日本風に言うと「ヤマダ電機駅」が「みずほ銀行駅」になったような感じである。
RTA has signed an agreement granting Mashreq Bank the naming rights of the ex-Sharaf DG Metro Station. Thus, the new name of the station has become Mashreq Metro Station. pic.twitter.com/4wPvwE30YR
— RTA (@rta_dubai) May 18, 2020
※RTAとはRoads & Transport Authority(ドバイ道路交通局)。ドバイの交通に関連する一切を取り仕切る政府機関。
命名権はいくらで買える?
ドバイメトロ駅の命名権の値段は、駅の位置にもよるが、10年契約で4,000万AED(約12億円)とも言われる。
企業の名前が駅名になることは、大きな広告宣伝効果があるのだろう。
なんと言っても毎日毎日、繰り返し大勢の人の意識にすり込まれるのだ。そう考えたら、むしろ安いものかもしれない。
例えば、Mall of the Emirates駅(エミレーツ・モール駅)は、モールを経営するMajid Al Futtaim(マジッド・アル・フタイム)が命名権を長年ずーっと購入し続けている。
ショッピングモールに直結したあの駅が、あの名前なのは、アル・フタイムが金を積んだ結果なのである。
幾度も変わる駅名たち
ドバイメトロの駅名は、これまでに何度も変わってきた。
私がドバイに来て約5年だが、その間にも何度も変わっている。その変遷をちょっと振り返ってみたい。
Palm Deira -> Gold Souq(ゴールドスーク)
今回(2020年)。有名観光地であるゴールドスークに行ける駅が、それらしい名前になった。
Al Karama -> ADCB(エーディーシービー)
インド人が多く住む旧市街、カラマ。2014年に、Abu Dhabi Commercial Bank(銀行)が命名権を獲得した。
Noor Islamic Bank -> Noor Bank(ヌールバンク)
この駅の命名権を有するヌール・イスラミック・バンク(銀行)が2014年に社名変更をした際、あわせて駅名も変えた。(「イスラミック」がなくなっただけ)
FGB -> FAB(エフエービー)
この駅の命名権を有するFirst Gulf Bank(銀行)が、2017年にNational Bank of Abu Dhabi(通称NBAD)と合併し、First Abu Dhabi Bankという名前に。あわせて駅名も変えた。
Sharaf DG -> Mashreq(マシュレク)
長らくSharafグループの家電量販店「Sharaf DG」が命名権を持っていたが、今回(2020年)、Mashreq銀行が獲得することとなった。
尚、Sharafはサンリオ、Mashreqはみずほのパートナーでもある。
Dubai Marina -> DAMAC(ダマック)
マリーナの最寄駅の命名権を、2014年に不動産王フセイン・サジワニ氏率いるDAMACが購入。
「私の行きたいマリーナ駅がない!助けて!」と観光客にいちばん聞かれるヤツ。
JLT -> DMCC(ディーエムシーシー)
JLTことJumeirah Lakes Towers駅の命名権を、2018年、Dubai Multi Commodities Centreフリーゾーン庁が獲得。
尚、与沢翼氏が法人を設立したのは、ここのDMCCフリーゾーンのようだ(本人のブログによる)。
Nakheel Harbour & Tower -> Jabal Ali(ジェベルアリ)
デベロッパーのNakheel社が、その名の通りの超高層ビルを建設しようとしていたが、2009年のドバイショックで頓挫。名前だけが夢の跡のように残っていた駅であった。
ここが、既存路線(Red Line)と万博会場行き新路線(Route 2020)との連結ポイントとなるため、一時期は工事でクローズしていた。
世界最大の人工港を有する港湾フリーゾーンJabal Aliの名を冠した駅として、2020年に生まれ変わった。
Jebel Ali -> UAE Exchange(ユーエーイー・エクスチェンジ)
2015年、送金業社であるUAE Exchangeが命名権を獲得。
送金業社とは、日本人にはあまり馴染みがないかもしれないが、簡単に言うと出稼ぎマンが母国へ国際送金する際に使うやつである。出稼ぎの街ドバイでは、一般の銀行と同じくらい多く見かける。


ちょっと待て。じぇべるあり駅が2つないかえ??
よーく見ると、元々あったのはJebel Ali、新しいのはJabal Aliということで、微妙にスペルを変えてある。これで新旧を見分けてくれということなのだろう。しかしアラビア語ではどちらもجبل عليで、同じである。
書き分ける気ないんかい。
さて、このように頻繁に変わるドバイメトロ の駅名たち。
前項で紹介したエミレーツ・モール駅は、企業が命名権を獲得したことで、一般利用者にとっては「その駅に何があるのか」が分かりやすくなった、嬉しい事例だろう。
しかし一方で、「企業の本社に近いから」みたいな理由で購入されてしまうと、利用者としては不便を感じる結果となることが多い。地名やランドマークと無関係な駅名がつけられると、どの街にある駅なのかピンと来なくなるのだ。
東京に置き換えると、ある日突然、新橋駅が資生堂駅に、二子玉川駅が楽天駅になってしまうようなもの。特に観光客を困らせてしまうこのシステムだが、大金が動くのだから仕方ないのだろう。
駅名を眺めることは、企業の趨勢を垣間見ることでもある。
そういう見方をすると、見慣れたメトロの路線図も、ちょっと興味深いものに見えてくるかもしれない。
これからのドバイメトロ
Nakheel Habour & Tower駅、あらためJabal Ali駅からは、ドバイ万博の会場へ向けて新路線が延ばされている。
また、Business Bay駅とNoor Bank駅の間では、駅の番号がとんでおり、将来的にはこの間に駅が増えるのかな?と予想される。
まだまだ拡がるであろう市民の足。また日系が受注する日が来ないかなぁ、なんて思いながら、まったり眺めていきたい。
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